筒美先生がデビューした1966年は、ビートルズが来日した年でもあり、我が国のミュージック・シーンが大きく動いた年でもあった。翌67年には青春歌謡のアイドルたちはグループ・サウンズに人気を持っていかれる。御三家と呼ばれ、歌謡界の頂点に君臨していた橋・舟木・西郷の三人も次第にヒットから遠ざかって行くのだが、この三人の中で筒美先生の作品を歌っているのは橋幸夫と西郷輝彦の二人。橋は「東京・パリ」など六曲の作品を歌っているが、西郷に限っては「自由の鐘」一曲のみである。この「自由の鐘」は筒美京平イヤーの1971年12月25日にリリースされているが、どのような経緯でリリースされたのか今となっては非常に興味がそそられる。西郷はデビューから主にクラウンレコード専属作家の北原じゅん氏や米山正雄氏の作品を歌っていたが、専属作家制度が崩壊してからはいろんな作家の作品にチャレンジしていた。僕がこの「自由の鐘」を初めて聴いた時、とにかく今までの彼が歌っていた楽曲とはまるでテイストが違っていて強烈なインパクトがあった。後に筒美先生の作品だと知って、なるほどと頷くことになるのだが。おそらく「夜のヒットスタジオ」でのお披露目だったような気がする。辺見マリとの結婚が公になっていた西郷は、この曲を歌い終えた後、拍手に送られてスタジオを出て行ったようなシーンが薄っすらと残っているのだが、定かではない。