僕の業界の平均年齢は、4年前のデータによると65歳らしい。したがって、50代は若手、40代は子供、30代になると、まるで幼児の扱いとなる。
1987年、30代前半だった僕は、業界の中では幼児。だから仕事と言っても、得意先の太鼓持ちのようなものだった。
忘年会の季節になると、1987年を思い出す。得意先から呼び出しがかかる度、新地本通りを駆け足していた日々。街はバブル景気で狂喜乱舞していた。
「リンダ」は、そんな頃の思い出が詰まっている。
この年、「愛と幻想のファシズム」の単行本が出版された。作者の村上龍は、僕より少し年上の30代だった。
後に「オウム事件」が起きた時、この作品を読んだ人たちは、村上龍の予知能力を認めたに違いない。そんな衝撃的な作品だった。1987年は、愛と幻想に満ちていた。