三月といっても肌寒い日が続くが、春の兆しが見え始めると必ずと言っていいほど聴きたくなるのがザ・ワイルド・ワンズの「バラの恋人」。渡辺茂樹が加入しアイドルGSとしての存在感を確立した曲だが、メロディアスで甘い歌詞はこの季節にピッタリだ。ザ・ワイルド・ワンズといえば「思い出の渚」に始まり「夕陽と共に」、「青空のある限り」や「若草萌える頃」、近年に至ってはジュリーとのコラボとなる「涙がこぼれちゃう」など良い曲がいっぱいあるが、僕にとってはやはりこの「バラの恋人」が一番だ。

ところでSMAPの解散騒動があった時、担当マネージャーの戦略手腕が評価されたひとつに、売れなかったSMAPをバラエティ番組に出演させてブレイクさせたというのがあった。これは古典的なグループ・タレントの売出し方のひとつで、50年代後半に売れないジャズ・バンドだったハナ肇とクレイジー・キャッツが「大人の漫画」というコント番組でブレイクし、その後今でいう「国民的タレント」になったことは有名な話だ。それ故僕はSMAPとクレイジー・キャッツがどうしても被ってしまう。両方ともグループのメンバー一人一人がキャラ立ちしていて、音楽面のみならずタレント・俳優として活躍していたこともイメージが重なる理由の一つだ。だから随分前にグループ内の人気者ということでキムタクに対してジュリーが引合いに出されたことがあったが、僕にとってはキムタクに対峙するのは植木等なのである。

 さて話はワイルド・ワンズに戻るが、クレイジー・キャッツの成功で味を占めた渡辺プロは所属の人気GSにバラエティ番組のレギュラーを持たせた。ファン層を拡大させグループのタレント寿命を延ばす戦略だったのかも知れないが、ジャズ喫茶からパフォーマンスを積み上げてきたスパイダースと違って、短期間でアイドル化したGSが第、第のクレイジーになれる訳がなかった。いや、むしろバラエティを完全拒否した加橋かつみのように、GS側がクレイジー・キャッツのようなタレントになる事を拒んだのだ。1970年になってワイルド・ワンズが「いいのかな」をリリースした時、「彼らもクレイジーの路線に行くのか」と吐き捨てるように言った先輩の言葉を思い出す。でも僕はこの「いいのかな」は大好きだった。コニー・フランシスを彷彿とさせるオールディーズ・テイストだったから。