もう15年以上前になるが、取引先に川出美由紀さんという営業担当がいた。川出さんは子供のころ合唱団に入っていたそうで、おそろしく歌の上手い女性だった。そのことを知るのは僕の誕生日、仕事関係の人たちとの会食の後、2次会のカラオケでのことだ。そこで彼女は僕のために、なんと僕が大好きだったローリン・ヒルの「Ex Factor」を歌ってくれたのだ。この歌だけはローリン本人しか歌えないと思っていたし、まさかカラオケがあるとは思ってもいなかった僕は、彼女が歌い出した直後に鳥肌が立った。

川出さんの「Ex Factor」は完璧だった。ローリン本人が歌っているような錯覚さえ覚えた。だが他の人たちは「Ex Factor」はおろかローリン・ヒルさえ知らない。僕がいくら川出さんの凄さを伝えても、原曲を知らない彼らには感動が伝わらなかった。そんな彼らを前に、彼女が次に歌ってくれたのが、誰もが知っているマライヤ・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」だった。この曲にはみんな大盛り上がりで、カラオケルームは一足早いクリスマス・パーティーのようだった。あの日以降、僕は川出さんとデュエットしたくて、リッキー・マーティンとクリスティーナ・アギレラの「Nobody Wants To Be Lonely」を覚えたが、彼女が寿退社したため実現に至っていない。

All I Want for Christmas Is You」にはもう一つ思い出がある。それは今から8年前のクリスマス・イブに頂いたプレゼントだ。その年の夏、友人から紹介されて通い始めた北新地のラウンジで、田島尚美さんというホステスさんと出会った。丁度僕が出版した直後だったので、読書好きな彼女とはよく話が合った。CDや書籍、また誕生日にはWEDGWOODの揃いのマグカップなど、彼女からは一杯プレゼントを頂いたが、その彼女のクリスマス・プレゼントが「Love Actually」のDVDだった。この作品にはいくつものラブ・ストーリーが登場するが、音楽的に盛り上がるのはイブに行われた子供たちのコンサートのシーン。トーマス・サングスター演じるサム少年が片思いのジョアンナのためにドラムを始め、コンサートでジョアンナのバックを務める。そして、その時彼女が歌ったのが「All I Want for Christmas Is You」だった。

ところで田島さんだが、彼女はその後自らスナックを立ち上げる。だが、元来身体の弱かった彼女は1年も経たないうちに体調を崩し、店を閉じてしまうのだった。「All I Want for Christmas Is You」を聴くと、今頃彼女は何をしているのだろうかとふと思う。


(LAに住んでいる友人がレゴで作ったクリスマス)

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