僕は今まで人から頭が良いと言われたことがない。むしろ「アホ」「バカ」と言われ続けてきた。特に小学校の時は酷かった。成績は最低だった。弟が頭が良かったため両親は僕を完全に見放した。頭が悪くて勉強ができないことほど惨めなことはない。だから僕は不良の音楽と言われたロカビリーや虐げられた黒人のゴスペルやR&Bが好きで、歌謡曲はほとんど聴かなかった。優等生の象徴のような御三家は大嫌いだった。歌謡曲で好きなのはこの「出世街道」と「ヨイトマケの唄」ぐらいだ。
僕は自分の子供にだけは自分が受けてきた侮蔑を受けさせたくなかった。幸運にも僕は頭が良くて、それなのに何故か情に脆い女性を妻にすることができた。おかげで二人の子供は世間から侮られずに済んだ。